ゆく。

生活に発見を

『Nのために』

自分の気持ちを分散させるために、湊かなえさん原作『Nのために』を観ました。『白夜行』になんとなく似ているような。ただ個人的にはこちらの方が明るめというか、救いがあるような気がします。

 

心こそ結構痛みましたが、ストーリーといい人物設定といい、本当に面白かった!

観始めたら全然止まらず朝を迎えた回数2回。なんと2日で観終わっちゃいました笑 

 

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それぞれの時代で色が変化するのも良いですよね。島時代はセピア色で、現在ではぐっと彩度が落ちる。大学生時代の色が最も鮮やかなのは、彼らが活き活きと、楽しかったと振り返ることができるからなのかもしれません。

 

安藤演じる賀来賢人さんについてですが、実は彼の演技を見るのは『今日から俺は!!』に次いで2作目です。「今日俺」を観ていた時から思っていたことなのですが、彼からは利口さというか、野心さというか、近寄りがたい雰囲気を感じます。

御曹司役とか、下々を蹴落とす役とか、はたまた出世しまくる役とか、そういう役がハマりそうだと思うのですがどうですかね笑

 

以下感想兼考察(ネタバレしてます)

 

 

クライマックス、安藤は杉下を思い外からチェーンを掛けますが、これこそN計画に関わった全員の人生の分岐点ですよね。

 

杉下にとっての究極の愛は、第二者にも第三者にも知らせずに行う"罪の共有"なわけですが、安藤はそれを独りよがりだと思っています。他者のために助けに行くこと、助けを求められることこそ、彼が思う愛。

 

しかしその後の展開で、杉下は成瀬に「助けて」と、安藤には「入らないで」と伝えます。

杉下にとっての究極の愛は"罪の共有"ですが、彼女は苦しかったり、辛かったり、とにかくどうしようもない状況に陥ると、自分1人でなんとかしようとします。言い換えるなら杉下は、彼女が自己犠牲をすることで、苦境から自分以外の人間を離すことができる、守ることができると思っているのだと思います。

つまり杉下は、安藤を守るために殺人現場から追い出したわけです。そして事件に関連したすべての人間が彼を守るために秘密を貫きました。これは杉下の望みを全員が理解していたからだと思います。

 

また一方で、更に述べるなら、安藤が外からチェーンを掛けたということは、自分自身を殺人現場から締め出したということ。つまり安藤は彼自身の手によって、杉下の心に鍵を掛けたというふうにも捉えることができるのではないでしょうか。

 

作者が安藤と杉下の名前を同じ”のぞみ”にした意図は分かりませんが、もしかすると彼らはそれぞれ陰と陽の関係にあったのかもしれません。

杉下は大変な子供時代を経験し、それがきっかけで人生が180度変わってしまいました。あの事件さえなければ、彼女は安藤と同じような人生を生きるはずでした。

そんな安藤の人生に、彼女は自身を重ねていたのかもしれません。

 

また、安藤が杉下を思ってチェーンを掛けるという選択をしたことで、彼は事件発生の瞬間に居合わせるという状況から免れたわけです。このことからも、安藤と杉下は紙一重のような立ち位置であるのかもしれません。